2014年12月18日木曜日

2015年版 間違いだらけのクルマ選び 徳大寺有恒、島下泰久著 進化促す秀逸な批評 - 日本経済新聞

2015年版 間違いだらけのクルマ選び 徳大寺有恒、島下泰久著 進化促す秀逸な批評

日本経済新聞

... 「はたして日本車は美しいだろうか」という問いかけと、トヨタの燃料電池車「ミライ」の登場の重要性を手際よく語ることから本書は始まる。それは日本の自動車メーカーの強さと弱さへの徳大寺有恒の遺言である。 また、島下泰久による、楽しさと、安全という側面からの「自動 ...(草思社・1400円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

「はたして日本車は美しいだろうか」という問いかけと、トヨタの燃料電池車「ミライ」の登場の重要性を手際よく語ることから本書は始まる。それは日本の自動車メーカーの強さと弱さへの徳大寺有恒の遺言である。

また、島下泰久による、楽しさと、安全という側面からの「自動運転」への疑義と、ホンダのトラブルの続出がサプライヤーとの関係において発生していることの指摘に、評者は大きく頷(うなず)く。

いうまでもないことだが、徳大寺有恒が日本のクルマの進化に果たした役割ははかりしれない。どのような「もの」も批評(評価)をぬきには発展しないのだ。

島下との最後の共著である「2015年版」を読みながら、改めてクルマのもつ無限の楽しさを感じた。島下はマツダのデミオを「世界に胸を張りたい出来」として論じているが、たしかに街でみる新しいデミオは小気味が良い。あるいは新しいクラウンへの辛辣さ。批評というものはこうでなければならない。匿名ではなく、自分の言葉に責任をもってこそ批評は成り立つ。次年版からの島下の役割が期待される。本年の掉尾(とうび)を飾る5つ星。

★★★★★

(福山大学教授 中沢孝夫)

[日本経済新聞夕刊2014年12月17日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする

★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め

★★★☆☆ 読みごたえあり

★★☆☆☆ 価格の価値はあり

★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

2015年版間違いだらけのクルマ選び

著者:徳大寺 有恒, 島下 泰久

出版:草思社

価格:1,512円(税込み)

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魂をなくした男(上・下) ブライアン・フリーマントル著 中年スパイが一発逆転 - 日本経済新聞

魂をなくした男(上・下) ブライアン・フリーマントル著 中年スパイが一発逆転

日本経済新聞

冷戦期から延々とつづく窓際族スパイ・シリーズの最新作。驚くことに(失礼)、集大成のような傑作になった。ソ連がロシアと変わっても、熾烈(しれつ)な情報戦の対決構造は不変(?)である。 冴(さ)えない中年男チャーリー。いつも組織の生贄(いけにえ)にされかかるが、一発 ...(新潮文庫・各670円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

冷戦期から延々とつづく窓際族スパイ・シリーズの最新作。驚くことに(失礼)、集大成のような傑作になった。ソ連がロシアと変わっても、熾烈(しれつ)な情報戦の対決構造は不変(?)である。

冴(さ)えない中年男チャーリー。いつも組織の生贄(いけにえ)にされかかるが、一発逆転、罠(わな)を逃れる奇跡のスパイ。生き延びつづけて、三十余年。

要人の亡命、内部の裏切り、主人公に迫る暗殺チーム。今回も、道具立てはオーソドックス。情報戦のプロが集って心理のかけひきを競う。敵の敵も、周囲はみな敵だ。ん? これは、時計の針が止まっているかのような「冷戦世界」か。

しかも、場面のほとんどは室内。病室、尋問室、ホテル、会議室。アクションはない。主人公が空港で銃撃される事件(正確には、これは前作から引き継いだプロット)は、分析の対象だ。つまり「途中から始まっている」ような小説なのだ。

……この調子で紹介していくと★1個と勘違いされそうだな。

ところがお立会(たちあ)い!

フルサと地味さに徹したこの小説が、なんと面白いのだ。フリーマントル節、ここに全開。戸田裕之訳。

★★★★

(評論家 野崎六助)

[日本経済新聞夕刊2014年12月17日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする

★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め

★★★☆☆ 読みごたえあり

★★☆☆☆ 価格の価値はあり

★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

魂をなくした男(上) (新潮文庫)

著者:ブライアン フリーマントル

出版:新潮社

価格:724円(税込み)

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2014年12月17日水曜日

日本売りより日本頼みのヘッジファンド - 日本経済新聞

日本売りより日本頼みのヘッジファンド

日本経済新聞

クリスマス休暇を控え、ヘッジファンドは、虎視眈々(たんたん)と日本株買い・円売りポジション巻き戻しのタイミングを狙っていた。 そこに降って湧いたような、ギリシャ不安再燃と中国株乱高下。 彼らの立場からは、格好の売り手仕舞いの口実となった。 ここで、今後の日本株を ...

ホテルオークラ流、達人の窓ふき 心も晴れる磨き方 - 日本経済新聞

ホテルオークラ流、達人の窓ふき 心も晴れる磨き方

日本経済新聞

記者が試して調べた暮らしの知恵が書籍になりましたとことん試します かんたんキレイ術! 出版:日本経済新聞出版社価格:1,260円(税込み). この書籍を購入する (ヘルプ):; Amazon.co.jp|; 楽天ブックス. 暮らしの知恵をMyニュースでまとめ読み. フォローする. Myニュース.大掃除のシーズン。忙しくて時間がない人も、窓だけはホテルのように一点の曇りもない状態に磨いて、新年を迎えたいものだ。ホテルオークラ東京(東京・港)で客室管理を長年担ってきた小野瀬玲・宿泊統括部部長に家庭でも使えるプロの窓磨きの技を聞いた。

小野瀬玲(おのせ・あきら) 東京都出身。1981年、大成観光(現ホテルオークラ)入社、要人が泊まるペントハウスなど客室を長く担当。2014年から宿泊統括部部長。社内検定「マスターオブハウスキーピング」の試験官も務める。53歳

――ホテルの窓はなぜピカピカなのですか。

「毎日多くの人の出入りがありますから、窓ガラスは様々な汚れがつきます。お子様の鼻や手形がくっきりつくことも。それを放置することは許されません。客室担当だけでなく全員が、気づいた時にすぐ拭いています。社内では1室につき83の清掃チェック項目を設けています。それを15分以内にすべて確認し、お客様に使っていただけるか見極めます。お客様が部屋に入って外の景色を見たとき、窓が汚れていては心が晴れ晴れとしませんよね。洗面台やコップにも磨き残しはないか、くまなく確認するのは基本動作です」

「おかげで家内にあてにされ、休日も家で掃除をしています。中でも窓はまめに拭きます。一見きれいでも、触るとざらつくことがよくある。居間や台所など多くの部屋にありますが、どの部屋も1番目立つガラスを拭くと部屋が明るくなる。半面、汚れが目立ちやすい所でもあります」

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――窓拭きの道具は。

「客室係が必ず持っているのは、ダスターと呼ぶ使い古した手ふき用タオル。三つ折りを2回繰り返して片手で持てるようにして使います。半分をぬらして汚れを落とし、乾いている所で拭いて仕上げます。家庭と違うのはダスターをクリーニングに出すこと。窓は常にきれいな布で拭く。100円均一ショップなどで売っているスクイージーも便利です」

――拭く手順は。

「ほとんどの汚れはペットボトルの水に台所用洗剤を数滴たらした液体で落ちます。まず、ダスターやスポンジにしみ込ませ、窓面をぬらし汚れをふやかします。直接スプレーしたり、洗剤を濃くしたりするのは禁物。泡が立ちすぎると何度も拭かなければならず手間です。液がたれるほどぬらす必要はありません。汚れが広がるのでゴシゴシ拭くのもやめましょう」

「汚れがふやけたら、ダスターやスクイージーで上から下に線を引くように拭いていきます。スクイージーは下まで拭いたら毎回ダスターでぬぐうことが肝心。下までいったら横に拭いて、汚れた液がたれないようにします。大きな窓は上下に二分して拭くのもよいでしょう。欲ばらないのもコツの一つです」

――拭いても筋が残る。

「ダスターで汚れを拭きとったら、必ず乾いたタオルで仕上げます。ポイントは真綿をなでるように優しくから拭きすること。力をいれてふいても、うまくいかず疲れるだけ。三つ折りを2回すれば適度な厚みになり、ふわっと握って優しく円を描くように仕上げられます。ただし、スクイージーで汚れを取った場合は、から拭きは不要です」

「鏡も基本は同じですが、洗面台の鏡は汚れがつきやすい下の方から拭くとよいでしょう。浴室の鏡は魚のウロコのようなシミがよくできます。水のカルキ成分が固まったもので、ダスターやスクイージーでは取れません。ダイヤモンドの粉がついた専用パッドが千円程度で市販されています。それを使いましょう」

――大掃除の季節です。

「33年前にホテル勤めを始めて以来、清掃がどれだけ大切かを先輩たちからたたき込まれてきました。客室担当はホテルの裏方。でも、お客様は客室にいる時間が一番長いのです。快適に過ごしてもらい、また泊まっていただけるよう、念には念を入れなければいけない。それは家庭でも同じだと思うのです。自分と家族が快適に過ごすため、全員で掃除を心がける。それで家庭も円満になるはず。我が家もそうですよ」

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リターン・トゥ・ケインズ B・W・ベイトマンほか編 金融危機後の経済学界の変化 - 日本経済新聞

リターン・トゥ・ケインズ B・W・ベイトマンほか編 金融危機後の経済学界の変化

日本経済新聞

世界金融危機とその後の深刻な不況は、マクロ経済学研究の方向に大きな疑問を投げかけた。危機前には、ケインジアンと古典派の長期論争の中から、両者を統合したニューケインジアンの動学的確率一般均衡(DSGE)モデルという新たな標準が生まれ、最適な政策ルールが ...世界金融危機とその後の深刻な不況は、マクロ経済学研究の方向に大きな疑問を投げかけた。危機前には、ケインジアンと古典派の長期論争の中から、両者を統合したニューケインジアンの動学的確率一般均衡(DSGE)モデルという新たな標準が生まれ、最適な政策ルールが分析されるようになっていた。危機によって、現実と理論の双方が崩れたかのように思われた。市場の価格発見機能や調整機能を信用して、均衡点の周囲における変動を分析することの、現実妥当性が揺らいでいた。

(平井俊顕監訳、東京大学出版会・5600円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

危機対応の諸策が施される中、学界においては研究パラダイムの再検討が進められた。温故知新も有力な研究戦略となった。不況下の財政政策の有効性が再評価されたり、第2次大戦後に懸念された長期停滞論が再注目されたりしている。本書に収められた諸論文は、主流派となったニューケインジアンとは異なる諸視点からケインズの遺産を検討しており、時宜にかなった出版といえよう。危機前から開催されてきた「国際ケインズ・コンファレンス」に基づく研究成果の邦訳で、粘り強い学説史的研究から現在の経済状況・政策に関する論究まで幅広い。

例えば、ジェームズ・トービンはケインズ経済学に対するミクロ的基礎づけの先駆者とみなされるが、ニューケインジアンが進めていた価格粘着性を中核とする研究方向については懐疑的だった。20年余り前、ニューケインジアン学派が形成されつつある中に開催された彼の講演に、激励を期待した若手研究者達はがっかりしたものである。

本書では彼の考えの背景が紹介されている。また、ニューケインジアンの旗手であるマイケル・ウッドフォードの研究枠組みを、クヌート・ヴィクセルやエリック・リンダールら20世紀前半に活躍したスウェーデンの先駆的研究者のものと、丁寧に比較した論考も興味深い。日本の研究者が中核となって推進されてきたコンファレンスであり、日本の経験に基づいた寄稿も含まれていることが喜ばしい。

現時点で米国経済は回復しつつあり、複数利子率の導入などでDSGEモデルも拡充されてきている。今日の経済システムは、世界金融危機という大ショックを乗り切りつつあるのではないだろうか。学界では、危機前の主流派パラダイムの一部は放棄され、非主流派の一部が取り入れられていく。やや読みにくい訳も散見されるが、本書のどの部分が再評価されるのか思い巡らすのも楽しみ方だろう。

(神戸大学教授 地主 敏樹)

[日本経済新聞朝刊2014年12月14日付]

リターン・トゥ・ケインズ

著者:

出版:東京大学出版会

価格:6,048円(税込み)

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つながりっぱなしの日常を生きる ダナ・ボイド著 - 日本経済新聞

つながりっぱなしの日常を生きる ダナ・ボイド著

日本経済新聞

突然だがクイズの時間だ。四六時中スマートフォンをいじりながら生活し、授業中も食事中もフェイスブックの「いいね!」の数を気にしているティーンは果たして「ネット中毒のひきこもり」だろうか。もしかしたら彼/彼女はフェイスブックで100人の「友達」を登録し、学校で人気者で ...突然だがクイズの時間だ。四六時中スマートフォンをいじりながら生活し、授業中も食事中もフェイスブックの「いいね!」の数を気にしているティーンは果たして「ネット中毒のひきこもり」だろうか。もしかしたら彼/彼女はフェイスブックで100人の「友達」を登録し、学校で人気者であるがゆえにネット上でアクティブなのかもしれない。そう、もはやインターネットは「ひきこもりのオタク」たちの楽園ではなく、「社会そのもの」なのだ。

(野中モモ訳、草思社・1800円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

著者はいまや不可欠のインフラとなったインターネットの存在それ自体を善/悪とする考えから徹底して距離を取り、あくまでそれを既に存在する人間の性質や社会の傾向を可視化するものである、と主張する。

たとえば本書は「デジタルネイティブ」という存在を否定する。生まれたときからインターネットに接続された社会が存在していた彼らだが、決して新しいメディアに対応した新人類などではない。私たち20世紀に生を受けた大人たちと同じように、新時代のメディアリテラシーを教えられなければウィキペディアの記述ですら平気で鵜呑(うの)みにする。

あるいはティーンをインターネットに追いやったものは何か。本書が指摘するのは、近年のセキュリティへの親世代の意識向上(過剰?)によるストリートやモールからのティーンの排除傾向や、学校選択の普及による地域コミュニティの変化といった「大人の事情」だ。要するに大人の社会が半ば無意識に現実空間からネットへティーンの社交の場を誘導しているのであり、そして今度はかつてのストリートのようにネットが危険であると苛立(いらだ)ちを募らせている、というのだ。そう、インターネットは子どもの愚かさと大人の頭の硬さを、そして既存の階層や人種の壁もそのまま電子空間に可視化するのだ。

このように166人に及ぶティーンとその親を中心としたインタビューを引用しつつ、現代の情報社会について、ひとつひとつ「俗説」を否定してゆく著者の手さばきには圧倒的な説得力がある。しかしその明晰(めいせき)な分析を理解すればするほど、既に課題は、ネットが過剰に可視化し拡張するものをいかに活(い)かしてポジティブな社会を築くか、に移行しているはずだという思いも強くなる。これほどの聡明(そうめい)な知性が本書のようなその三歩手前の「露払い」に全力でコミットしなければならないことが、現代における人間と情報技術との幸福ならざる関係を象徴しているようにも思える。

(評論家 宇野 常寛)

[日本経済新聞朝刊2014年12月14日付]

つながりっぱなしの日常を生きる: ソーシャルメディアが若者にもたらしたもの

著者:ダナ・ボイド

出版:草思社

価格:1,944円(税込み)

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エッセンシャル思考 グレッグ・マキューン著 - 日本経済新聞

エッセンシャル思考 グレッグ・マキューン著

日本経済新聞

エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする. 著者:グレッグ・マキューン出版:かんき出版価格:1,728円(税込み). この書籍を購入する (ヘルプ):; Amazon.co.jp|; 楽天ブックス. ※価格情報は掲載時のものです。 レビュー トップに戻る · ライフ トップに戻る ...ビジネス書ランキング(11月30日~12月6日)

1(1)2015年 日本はこうなる

三菱UFJリサーチ&コンサルティング編(東洋経済新報社)

2(3)よくわかる贈与

日本経済新聞出版社編(日本経済新聞出版社)

3(―)左ハンドル国産車が日本を救う

小森正智、小森正隆著(プレジデント社)

4(―)マネーと国家と僕らの未来

ハッカーズ著(廣済堂出版)

5(6)なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか?

久世浩司著(SBクリエイティブ)

6(4)日本の論点 2015~16

大前研一著(プレジデント社)

7(12)ビジネスExcel実践術

日経PC21編(日経BP社)

8(―)21世紀の資本

トマ・ピケティ著(みすず書房)

9(19)教養としての経済学

一橋大学経済学部編(有斐閣)

10(5)エッセンシャル思考

グレッグ・マキューン著(かんき出版)

(東京・八重洲ブックセンター本店、カッコ内数字は同書店の前週順位)

米コンサルティング会社代表が、効率的に業務をこなすには「本質」に基づく思考法の実践が重要と説く。「他人の期待」に基づき「すべて」「今すぐ」といった具合に業務を進めると結局、消耗戦になると指摘。「どの問題がいちばん重要か」と自問する癖をつけることが仕事の質や生産性の向上につながるという。

[日本経済新聞朝刊2014年12月14日付]

エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする

著者:グレッグ・マキューン

出版:かんき出版

価格:1,728円(税込み)

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33年後のなんとなく、クリスタル 田中康夫著 - 日本経済新聞

33年後のなんとなく、クリスタル 田中康夫著

日本経済新聞

一九八〇年に新人賞を受賞し単行本がベストセラーとなった『なんとなく、クリスタル』の衝撃を、まだ生々しく記憶している人は少なくあるまい。バブルと称される時期よりずっと早く、ブランドとグルメの情報を網羅した風俗小説であると同時に、豊かさが飽和した日本の空虚感を予言 ...一九八〇年に新人賞を受賞し単行本がベストセラーとなった『なんとなく、クリスタル』の衝撃を、まだ生々しく記憶している人は少なくあるまい。バブルと称される時期よりずっと早く、ブランドとグルメの情報を網羅した風俗小説であると同時に、豊かさが飽和した日本の空虚感を予言的に湛(たた)えていた。

(河出書房新社・1600円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

本書はタイトルの通り、同作の33年後を描いている。ただし本書では、作者にきわめて近い「僕」ヤスオが一人称で語っている。信州で県知事も務め「脱ダム宣言」で県政をひっくり返したことがあるというから、ほぼ私小説的な「僕」である。現在は10歳若い妻と愛犬との、のどかな暮らしをしている彼が、かつて自分が描いた小説の主人公だった由利と再会する。ファッションモデルの華やかな女子大生だった由利も54歳。モデルを辞めてからフランス系の会社勤めをしたあと、ロンドンの大学院で経営学を学んだ彼女は、今はPRオフィスを立ち上げている。

物語的な展開はあまりない。かつて関係を持ったこともある女性たちと再会し、何度か会食しては来し方を聞き出し、「記憶の円盤」が回るのに身を任せたり、国情を憂える声に耳を傾けたりする。彼女らもそれぞれ結婚や離婚や病気を経た中年である。やがて「僕」は由利から悩みを打明けられる。

子宮頸(けい)がんワクチンの啓蒙活動に取り組む由利は、ワクチン接種被害の女性たちの声に衝撃を受けた。一方彼女は、アフリカに眼鏡を届ける社会貢献事業にも意欲を持っている。彼女の立ち向かおうとする壁は、脱ダム宣言が頓挫した壁と、かけ離れているようで実は同じ構造だと、読むうちに気付かされる。

こんなふうに本書は、かつての主人公由利のその後の人生を辿りながら、そこにヤスオの自分史と現在の主張を絡ませていく。女性関係に筆が及ぶと、ついかつてのドン・ファンのヤスオ君が甦りもするのだが、因習的な日本の政治風土の貧困を打破したいという情熱は衰えてはいない。富国強兵ではなく「富国裕民」を目標とし、愛国心ではなく「愛民心」に基づく「公益資本主義」の思想が、熱く語られもするのだ。

デビュー作で付けられた膨大な注も本書で復活しているが、とりわけ出生率の低下と、高齢化率の表に見られる著しい変化は、我が国の将来の危うさを如実に語っている。デビュー作の続編という体裁を取りながら、本書は著者が自らの生き方と信条を惜しみなく吐露した、警世と憂国の書なのである。

(文芸評論家 清水 良典)

[日本経済新聞朝刊2014年12月14日付]

33年後のなんとなく、クリスタル

著者:田中 康夫

出版:河出書房新社

価格:1,728円(税込み)

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本多猪四郎 切通理作著 - 日本経済新聞

本多猪四郎 切通理作著

日本経済新聞

ゴジラを知らない人は、まずいない。だが、映画「ゴジラ」の監督とたずねられて、すぐその名の出てくる人は決して多くないだろう。「ゴジラ」と言えば、円谷英二の特撮や伊福部昭の音楽とともに語られるか、反核映画として論じられるのが常であった。監督本多猪四郎にスポットが ...ゴジラを知らない人は、まずいない。だが、映画「ゴジラ」の監督とたずねられて、すぐその名の出てくる人は決して多くないだろう。「ゴジラ」と言えば、円谷英二の特撮や伊福部昭の音楽とともに語られるか、反核映画として論じられるのが常であった。監督本多猪四郎にスポットが当たることはほとんどない。私も本書を手にしてはじめて、本多がゴジラなど怪獣映画以外にも、さまざまなタイプの作品を残していることを知った。

(洋泉社・2500円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

では、こうした本多猪四郎の語られなさは何故なのだろうか。本書は、本多が長らく「クラフツマン(職人)」としてしか評価されてこなかった点を指摘する。職人肌の映画監督の対極に位置するのは、黒澤明をはじめとする「アーティスト」たちである。映画の黄金期であった1950年代、黒澤らによって作品としての映画が作られた一方で、数多くの消耗品としての映画も製作されていた。あたかも今日のテレビ番組のように作られ、その多くがビデオ化やDVD化の機会もなく忘れ去られていく、いわゆる「プログラム・ピクチャー」の一群である。

本多猪四郎も、映画会社の求めに応じて、手早く手堅く映画を撮る監督とみなされてきた。その怪獣映画も、怪獣ブームに便乗しようとする映画会社の意向に従順であったがゆえの産物であり、やがてブームの終焉(しゅうえん)とともに本多の監督生命も終わっていった……。もしくは、本多の晩年はアーティスト黒澤明の補佐役としてのみあった……。

そうしたこれまでの本多猪四郎像に、本書は異を唱えている。怪獣映画やSF映画にしても、ただ単に会社の命に従ったのではなく、もともと「科学好き」であった本多が工夫をこらし、誠実に撮り上げたものである。黒澤の補佐にまわったのも、ひとえに本多の撮影現場への愛情ゆえであった。そして、本多の作品の根底にあった戦争体験が、丹念に掘り起こされてもいる。

評者の場合も、世代的には怪獣映画にもっと思い入れがあっていいはずなのに、子どもの時分から怪獣・怪奇映画というだけで、どこか頭からB級と決めつけ敬遠してしまうところがあった。だがそれも、振り返って考えてみれば、「着ぐるみの怪獣やアニメーションの映画は、子どもだましのものだ」という当時の大人たちの価値観を、子どもなりに内面化してしまっていただけだったのだと思う。

本多に「子どもは簡単にだませない」との信念・覚悟があったからこそ、ゴジラは今日に至るまで、スクリーンの上に生き続けているのではないだろうか。

(関西学院大学教授 難波 功士)

[日本経済新聞朝刊2014年12月14日付]

本多猪四郎 無冠の巨匠

著者:切通 理作

出版:洋泉社

価格:2,700円(税込み)

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本多猪四郎 切通理作著 - 日本経済新聞

本多猪四郎 切通理作著

日本経済新聞

ゴジラを知らない人は、まずいない。だが、映画「ゴジラ」の監督とたずねられて、すぐその名の出てくる人は決して多くないだろう。「ゴジラ」と言えば、円谷英二の特撮や伊福部昭の音楽とともに語られるか、反核映画として論じられるのが常であった。監督本多猪四郎にスポットが ...

2014年12月11日木曜日

【MV】恋するフォーチュンクッキー / AKB48[公式] by AKB48



http://ift.tt/16S98ba 作詞:秋元 康 / 作曲 : 伊藤心太郎 / 編曲 : 武藤星児 「"恋チュン"踊れば、嫌なことも忘れられる」 本作は80年代ディスコ調のダンスナンバー! 懐かしいサウンドと心地良いリズムに思わず踊り出してしまうような楽曲です♪ 振り付け師はパパイヤ鈴木さん! 子供から大人まで、誰でも歌いながら楽しく踊れる覚えやすい振 り付けになっています。 MVではAKB48史上最多となる約4000人のエキストラと一緒に踊る 大パレードにも注目です! 2013.8.21 ON SALE!!

猫の開きの作り方 byもこにゃん How to make a cat opening by NT Daikoku



http://ift.tt/1ylrbWj 無防備!! My name is MOCO It is now ten months since he was born. I grew up boldly recently.Cat control by the cat engineering. It has been said that petting the tummy of a kitty is like frolicking in the back hair of an angel.

簡易集光装置付きソーラー噴水 by Tyan Toshi



http://ift.tt/1sfqlLY アルミボールを使って集光させてソーラー噴水をパワーアップをしました。

無人島、不食130日 [著]山田鷹夫 - asahi.com









著者:山田鷹夫  出版社:三五館 価格:¥ 1,296




 「飽食の時代」と叫ばれたのも今は昔。最近は「節食」が健康には欠かせないと耳にするようになったが、本書が提唱するのはその先を行く「不食」だ。

 これまでも「人は食べなくても生きられる」を訴えてきた著者が、沖縄県の内離島で130日間に及ぶ無人島生活を決行。裸で日々を過ごし、木に登り、漂流物を漁る。時には、貝や魚を獲り、生で食す。賞味期限の幻想から解き放たれているため、「腐食」も気にかけない。「不食と言いながら食べているではないか」と指摘はあるだろうが、1日当たりの平均摂取量は小魚半分程度に過ぎない。むしろ著者の無人島生活の狙いは完全なる「不食」の徹底ではなく、「食べなくてはならない」と急かされ続ける現代社会への懐疑にある。その意識は食にとどまらず、働き方やお金の意義、幸福論にまで及ぶ。

「現代の幸福論」は古代から幾度となく議論されてきており、目新しさはない。だが、著者の場合、無人島での不食という強烈な実践体験があるからか、極論ではあるものの不思議と惹きつけられる。







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