2014年12月18日木曜日

魂をなくした男(上・下) ブライアン・フリーマントル著 中年スパイが一発逆転 - 日本経済新聞

魂をなくした男(上・下) ブライアン・フリーマントル著 中年スパイが一発逆転

日本経済新聞

冷戦期から延々とつづく窓際族スパイ・シリーズの最新作。驚くことに(失礼)、集大成のような傑作になった。ソ連がロシアと変わっても、熾烈(しれつ)な情報戦の対決構造は不変(?)である。 冴(さ)えない中年男チャーリー。いつも組織の生贄(いけにえ)にされかかるが、一発 ...(新潮文庫・各670円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

冷戦期から延々とつづく窓際族スパイ・シリーズの最新作。驚くことに(失礼)、集大成のような傑作になった。ソ連がロシアと変わっても、熾烈(しれつ)な情報戦の対決構造は不変(?)である。

冴(さ)えない中年男チャーリー。いつも組織の生贄(いけにえ)にされかかるが、一発逆転、罠(わな)を逃れる奇跡のスパイ。生き延びつづけて、三十余年。

要人の亡命、内部の裏切り、主人公に迫る暗殺チーム。今回も、道具立てはオーソドックス。情報戦のプロが集って心理のかけひきを競う。敵の敵も、周囲はみな敵だ。ん? これは、時計の針が止まっているかのような「冷戦世界」か。

しかも、場面のほとんどは室内。病室、尋問室、ホテル、会議室。アクションはない。主人公が空港で銃撃される事件(正確には、これは前作から引き継いだプロット)は、分析の対象だ。つまり「途中から始まっている」ような小説なのだ。

……この調子で紹介していくと★1個と勘違いされそうだな。

ところがお立会(たちあ)い!

フルサと地味さに徹したこの小説が、なんと面白いのだ。フリーマントル節、ここに全開。戸田裕之訳。

★★★★

(評論家 野崎六助)

[日本経済新聞夕刊2014年12月17日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする

★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め

★★★☆☆ 読みごたえあり

★★☆☆☆ 価格の価値はあり

★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

魂をなくした男(上) (新潮文庫)

著者:ブライアン フリーマントル

出版:新潮社

価格:724円(税込み)

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